2023年の記事
全29件
2023年
『スローターハウス5』を読む
早川書房から出ているカート・ヴォネガットの『スローターハウス5』を読んだ。それについて書く。この小説で書かれていることはひとつだけだ。
続きを読む『ユービック』を読む
フィリップ・K・ディックの『ユービック』を読んだ。それについて書く。この作品にはあらゆるところに「二つの力の対立」というモチーフが姿を見せる。
続きを読む映画『君たちはどう生きるか』を観る
映画『君たちはどう生きるか』を一回観た。それについて書く。この記事はネタバレを含んでいる。この映画の最大の特徴は、説明がさっぱりないことである。
続きを読む『スプートニクの恋人』を読む
村上春樹の『スプートニクの恋人』を二回読んだ。とても良い小説だと思った。それについて書く。まず確認しておきたいのは、この小説は構造の読解がむずかしいということである。
続きを読む『高い城の男』を読む
フィリップ・K・ディックの『高い城の男』を読んだ。面白かったので、それについて書く。物語の名作というのは多くの場合、読者に対して優れた問いかけをする。
続きを読む『流れよわが涙、と警官は言った』を読む
フィリップ・K・ディックの『流れよわが涙、と警官は言った』について書く。本書のクライマックスは主人公タヴァナーがメアリー・アン・ドミニクと出会い対話をする場面である。
続きを読む『国境の南、太陽の西』を読む
村上春樹の小説にくりかえし現れるテーマとして、完璧にくっついている一組の男女というものがある。たとえば『ノルウェイの森』のキズキと直子がそうである。
続きを読む『古事記』を読む2
古事記に海はくりかえし登場する。イザナギとイザナミが矛を突き立てる原初の混沌も、たぶん海がイメージの源なのだろう。その後にイザナミの死を経過してから、イザナギは三貴子を産む。
続きを読む『青い花束』を読む
岩波文庫の『20世紀ラテンアメリカ短篇選』で、パスの『青い花束』を読んだ。非常に短い作品だがとてもよかったので、この記事を書くことにした。
続きを読む影と鏡像5
影と鏡像は負の姿である。それは正の姿としては、古事記における二ということになる。西洋的な価値観から古事記における二の姿を見ると、それは影と鏡像として目に映る。
続きを読む『街とその不確かな壁』を読む
村上春樹の『街とその不確かな壁』について書く。この本は別段面白くはないし感動的でもない。文章そのものにもこれといった刺激や独特の味はないから、読者としては最初から最後まで同じ味のコース料理を食べさせられているような気持ちになる。
続きを読む『古事記』を読む1
いま僕は河出文庫の現代語訳の『古事記』を読んでいる最中だ。全体の1/3まで読み進めた。今日はここまでで心に留まったことを書いてみたい。
続きを読む『書記バートルビー』を読む
僕は光文社古典新訳文庫で『書記バートルビー』を読み、その後に柴田元幸の訳で『書写人バートルビー―― ウォール街の物語』を読んだ。
続きを読む『1Q84』を読む4: 卵型の比喩
リトル・ピープルに対抗するもの。それこそが個人の願いである。自分固有の願いを持ち、育て、また自覚すること。それを守り切り、かなえること。
続きを読む『1Q84』を読む3: リトル・ピープルの正体
前回の記事で、見えない力が作用して、作用される側が力を行使するという構造について言及した。これはリトル・ピープルについても同じことが言える。
続きを読む『1Q84』を読む
あらためて村上春樹の『1Q84』を読み解いていく。本稿は読み解きをおこなった記事の目次である。
続きを読む『1Q84』を読む2: 海の直喩と月の隠喩
『1Q84』には海を軸にした直喩が頻出する。次に一覧を掲げたので確認していこう。ページ数は文庫版を参照している。1Q84年の世界には二つの月が空に架かっている。
続きを読む影と鏡像4
主人公が引き裂かれの状況に置かれている時に、二つの異なる道の融和を図らざるをえないのは、往々にして作者にとっても困難な道である。
続きを読む『フランケンシュタイン』を読む
光文社古典新訳文庫でシェリーの『フランケンシュタイン』を読んだ。とても面白かった。そこで今回はこの本について書いてみたい。
続きを読む影と鏡像3
本稿では次の作品群をとりあげる。『ウィリアム・ウィルソン』は単純な構造の作品である。一般的に言って影と鏡像という現象の根底にあるのは、自己の良心と欲望の相剋であるが、この作品では影が良心として立ちあらわれ、本体のほうは欲望を体現している。
続きを読む影と鏡像2
影と鏡像という構造の中心にあるのは引き裂かれへの独自の態度である。影と鏡像は、主人公が二つの力に引き裂かれる状況に陥っているときに、その解決を、片方の抹消ではなく、両者の融合でおこなおうとする場合に立ち現れる。
続きを読む村上春樹の小説のどこがいいのかと聞かれたら
僕は今まで答えるのに困る問いがあった。村上春樹の小説をまったく読んだことがない人から「彼の作品ってなにがいいの?」と尋ねられた場合に、どう答えればいいか分からなかったのだ。
続きを読む影と鏡像
影と鏡像という文学のテーマがある。これはシャミッソーの『影をなくした男』という小説から開始されたらしい。明らかな後継作品としてホフマンの『大晦日の夜の冒険』がある。
続きを読む『日はまた昇る』を読む4
前回の記事で説明した通り、『日はまた昇る』は『ドン・キホーテ』的な小説にとって替わることを狙って書かれた。ドン・キホーテをなぞらえた人物であるロバート・コーンが滅んで、若者ロメロがあらわれるという物語構成にその意図はよく表現されている。
続きを読む『1Q84』を読む5: 『城』のアンサーとしての『1Q84』
カフカの『城』については以前解説した。『城』が抱える本質的な問題に村上春樹の『1Q84』は答えていると思うので、今回はそれについて説明する。
続きを読む僕の考える小説の歴史の仮説
いままで僕は小説の歴史というものを意識したことがなかった。それはとほうもなく巨大なもので、僕のような小者には到底理解できないに違いないと思いこんでいた。
続きを読む嘘と疲労、そこからの回復ということ
嘘は文学において避けられないテーマである。小説は基本、嘘を書く。普通は嘘だけでほとんどを構築する。小説はそうした砂上の楼閣、雲のようなあやふやなものであるにも関わらず、読んだ人の心を動かし、確実に新しい何かを与える。
続きを読む『天人五衰』の結末について
世の中には三島由紀夫の小説『天人五衰』のラストが理解できない人がいる。だから僕がそれをここで解説する。まず、門跡の聡子が嘘をついていたり、記憶を忘れていたりすると思ってる読者がいるが、これはまったくの誤解である。
続きを読む『日はまた昇る』を読む3
前回の記事で重要なことはすべて説明したので、ここでは細かい所を述べる。コーンはドン・キホーテ的な人物である。この小説の書き出しはコーンの人物描写となっているが、そこではいかにも『ドン・キホーテ』的な表現がなされている。
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